ブログ 92歳のつぶやき 補聴器
ブログ 92歳のつぶやき 補聴器
92歳の主人の父は、ここ数年本当に耳が遠くなった。
普通にしゃべる声はほとんど聞こえないから、私たちは大声で話しかける。意識して優しく話すが、大声では優しいトーンにはならない。周囲が聞いたら怒鳴りあっているのだと思うに違いない。
父が大好きなテレビは、もちろん映画館並みの大音響。
さらに同時に大好きな昭和の歌謡曲のCDを大音響で聞いている時、どんなに我慢強い私でも、5分とそこにはいられない。
私『少し、音下げてもいい?』
父『大丈夫だよ~。このくらい近所迷惑にはならないよ』
冬は窓を閉め切っているからまだしも、夏の網戸ごしのこの大音響、ご近所様いつも本当にすみません。夜中に『座頭市』を見ている時は特にすごい。刀で人々をバサバサ切る音、死にそうな人の断末魔、うめく声・・・まるでこの家で殺人事件が起きていると思われる。時々無言電話がかかってくるのは、きっとこのせい。
テレビのリモコンの音量ボタンを父が押す時は、まず45までグーッと上げてから、39くらいまで下げる。本人曰く、この方が聞こえやすいそうなのだ。補聴器は嫌い。あれは、聞きたい音以外の雑音も、耳に入ってくるのだそうだ。
実用書を何冊も手がけている、ベテラン編集者のKさんが教えてくれた。脳が音をキャッチするよう指示を出すから、人間は音が聞こえる。テレビの音だけを聞くようにするには、そういう訓練をして、脳に教えこまないといけないそうだ。だから補聴器は、耳が遠くなってから使っても遅い。よく聞こえる年齢から補聴器で聞く訓練をして、脳に教えこまないと、うまく使えないらしい。
時代劇チャンネルさん、日本映画専門チャンネルさん、完全な字幕放送を、一日も早く、お願いいたします!
そうでないと、私達夫婦もきっと耳が遠くなってしまうに違いない。
92年も生きることって、大変なことなのだ。