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ブログ 92歳のつぶやき 海苔

ブログ 92歳のつぶやき 海苔

92歳になる主人の父が、
「海苔買わなくていいか?まだある?」
と聞いてくるたび、少しドキドキしてくる。心が反応してしまうのだ。

父「海苔は、やっぱり日本橋の山本山に行かなくちゃだめだ」
私「近所のデパートにも、山本山はありますよ」
父「いや、やっぱり日本橋に行かなくちゃ」

わざわざ海苔を買うために、高速を運転して日本橋まで行かないでしょ。
そんな気持ちで一緒に近所のデパートに行く。
父としては、本当は日本橋でなくちゃダメなのだ。
近所のデパートの売り場の若いお嬢さんに、父が聞く。
「火鉢であぶる海苔ちょうだい」
店員さん「はっ?」
父「だからさ、あれだよ、火鉢も知らないのか?」
店員さん「はぁ・・・もう海苔は焼いてありますが・・・」
父「やっぱりィ!!日本橋の本店にしか、あれはないんだな~・・・」
かなり口調が厳しい父の対応に、戸惑い気味の店員さん。20代くらいだろうな、可愛そうだな。
店員さん「いえ、あの、当店は、本店のものも全てそろえてございますので・・・」
父「え~!?本当か~?・・・あっ、でも、うちに火鉢はなかったな・・・まぁいいや、どれが一番美味しいのか?」
店員さん「こちらのものが、御口あたりが良いと思いますが・・・」とピンセットで味見させてくれる。
父「じゃ、これ2袋!」
と元気良く買ってくれたので、店員さんはホッとした表情に変わった。
父に何度説明しても、昔の記憶に戻ってしまうらしく、同じようなやりとりを、海苔屋さんに来るとやるのだ。条件反射のように。

これが、ベテランの中年の店員さんになると、練れているから、こんな客に対してもたじろがない。
「お客様、良-く、お分かりですね。今ね、残念ながらね、あぶるものは、ないんですよ~」
父の「え~!?」の表情を見逃さずに、一緒に困った表情を見せるベテラン店員さん。
父は、何度も味わっているはずなのに、同じように驚いて大声を上げる。人生に練れている店員さんほど、客の気持ちに同化するのが早い。すると、父はそれ以上大騒ぎしないのだ。そして必ず2袋買う。
やっぱりすごいな、と思う。相手の気持ちに同化する事って、何よりすごい営業であり、マーケティングであり、結果を生み出すことなんだ。しかも即決だ。

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