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ブログ 92歳のつぶやき 記憶力

ブログ 92歳のつぶやき 記憶力

92歳の主人の父は、若い頃遊び人だった。
中でも歌舞伎が大好きだった。
最近の中村勘三郎の追悼記念番組に、釘付け。
「こいつら上手いはずなのに、声が小さすぎるぞ。発声がなってないな~」
といつものお小言。
私は心の中で、(お父さんの耳が遠いからですよ・・)と突っ込みを入れているが、口には出さないで聞いていた。そして、
「最近NHKは、ひな人形を歌舞伎にかけて、宣伝してるよな・・・戦略だな・・・」
とわけのわからないことを言っていた。
次の瞬間、私はびっくりして、目をみはった。
父が急に、歌舞伎調で長いセリフを言い出したのだ。

「ひなの節句のあくる晩 春で おぼろで ご縁日 同じさざえと蛤を放して 巡査の帳面に名を並べて 女房と名のって 一緒にまいる 西がしの お地蔵さまが縁結び・・・

月におぼろに白魚の かがりもかすむ 春の空
冷てえ風に ほろよいの 心持ち良く うかうかと
浮かれカラスの ただ一羽 ねぐらへ帰る川端で 
さおのしずくか 濡れ手で粟 思いがけなく 手にいる百両
おん厄はらいましょう 厄落とし
ほんに今夜は 節分か
西の海より 川の中 落ちた夜鷹は厄落とし
豆だくさんに一文の 銭とちがって金包み
こいつは春から縁起がいいわぇ…」

以上は、後日インターネットで調べて書いたが、父は何も見ずに、これを何度も繰り返していた。
しかしお地蔵さま・・・までの前半は泉鏡花の“日本橋”、後半は“三人吉三巴の白波”、二つをミックスしていたことがわかった。
しかも父の頭の中では、雛の節句と歌舞伎がひとつになって、NHKが仕掛けた経済の戦略だと勘違い。
昨日のことは忘れちゃうのに、楽しかった頃の記憶力は全然薄れていなかった。恐るべし。

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