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ブログ 94歳のつぶやき まだ大丈夫 

ブログ 94歳のつぶやき まだ大丈夫 

主人の父は94歳になった。

ますます話す内容が、不明になってきた。
耳が悪いせいか、せっかちになってきたせいか、
もともとあまのじゃくだったからか。
例えば、ある日の夕方雨戸を閉めるかどうか、私に聞いてきた時。

父「雨戸まだ閉めなくていいよな。閉めると暑いからな」
その日は最高気温が27度まで上がったが、
父は寒いと言ってガスストーブをつけていた。
私「お父さんは寒がりですから、もう閉めてもいいんじゃないですか?」
父「いやぁ~まだいいよ」
私「そうですね」
こういう時は相手に合わせるしかない。

父「雨戸は俺が閉めるから」
しばらく経って・・・
父「なんで閉めないの?もう暗いのに」
私「じゃあ閉めましょう」
父「いやぁまだいいよなっ!?」
そしてすくっと立ち上がり、父は雨戸を閉め始めた。

言ったことの反対のことをしましょう、というゲームなのかこれは。
それとも行間に言葉が隠れていて、語られていないだけなのか。
仕事やボランティアがなくて家に居ると、朝起きてから、夜寝るまでの間、こういうことが続く。
同じ説明を何度も何度もしなくてはいけないこと、
何度も何度も同じ話を聞かなくてはいけないことは、慣れてきた。
しかし父の話題が、あちらかと思えばこちら、こちらかと思えば今度はあちら、
という変化に時々私はついて行けなくなり、
「えっ!?それってどういう意味?」
という言葉をはさんで仕切り直そうとする。
それが気に障るのか、時々父は怒鳴りだす。
「だからっ!そうじゃないんだよ!!もういいよっ!!」

いつまでこれが続くのだろう。
いや、これからもっとハードルが高くなってゆくのだきっと。

私は、気分転換の時間を大切にしている。
仕事の帰りに雑貨屋に寄り道する。2駅電車に乗って江ノ島まで散歩したり、雲の形が変わるのを見たり深呼吸したり。
先が見えない、目に見えない恐怖感に心がとらわれないようにするのだ。

インターネットで調べたところ、
「物忘れに始まり、判断力、理解力が衰え、話のつじつまが合わなくなり、ささいなことで怒りやすくなる」
これらは認知症の特徴だ。父の現状にまさにぴったりだ。
しかし一つだけ父には当てはまらない項目があった。
それは
「意欲がなくなり、好きなテレビ番組を見なくなる」だ。
父にとって何はなくとも朝から夜中までテレビ。
時代劇と池上さんとダルビッシュ・勇は、夜中の時間帯でも見逃さない。
そしてお酒。
「もう手に力が入らないんだよー」
と言う父は、お酒を注ぐ時だけ細心の注意を払い、
一滴もこぼさないのだ。
そしてお酒が入ると、箱根八里の替え歌
「なんだかんだの神田川~」
をごきげんで歌っている。

まだしばらくは、大丈夫だ。
父がテレビに興味を示さなくなった日が、本当の戦いの始まりだ。

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