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ブログ 好きなアート ルネ・マグリット

ブログ 好きなアート ルネ・マグリット

ルネ・マグリットの回顧展が13年ぶりに東京に来ている。
子供の頃、怖いもの見たさで好きだったマグリット。
全身が鳥かごの男が帽子をかぶり、マントを羽織って座っていたり。
森の中で乗馬する貴婦人が木と木の間で、見えないはず部分と見えるはずの部分が逆になっていたり。
パイプを描いたその下に、
”これはパイプではありません”と文字を書いたり。
部屋いっぱいの巨大な岩、部屋いっぱいの巨大なバラの花。
どれも時間や重力やサイズの決まりごとを超えてしまった世界。写実的で不気味で美しい。
特に私が好きなのは、葉の葉脈の独特な深い青緑色と、球形の金属の銀色。有り得ない構図の中で浮いている。
やはり深い、怖い色だ。

1898年、ベルギーで商人の父、帽子職人の母の3人兄弟の長男として生まれた。
マグリットの母は何度か自殺を試み、父は母をベッドルームに閉じ込めた。ある日彼女は逃げ出して入水自殺をはかる。14歳の少年マグリットは心を痛めていたに違いない。
18歳、ブリュッセルの美術学校に入学、キュビズムやダダなど、新しいアートの流れに出会い、ジョルジョ・デ・キリコの絵に「涙を抑えきれないほど感動」し、シュールレアリスムという方向を見つけた。しかし彼の生き方は破天荒でもクレイジーでもなく、商業的な広告の世界でイラストやポスター制作で生活をする地道なものだった。
42歳、第二次世界大戦中、ナチスから逃れ南仏で暮らし、50歳で初パリの個展の直前、印象派のような柔らかい絵を描き上げたが、それらは誰にも評価されず忘れ去られた。きっと傷心しただろう。
3年後派手なパリの集まりを離れベルギーに戻るが、この時、彼の持っていた本領が発揮される。パリの個展の失敗は無駄ではなかった。
生活の中にある身の回りのモノたちのイメージと名前や、言葉の問題を追求し、緻密な写実の表現に戻った。
遺された書簡の中に何度も”問題”problemと、”解決”solutionという言葉が出てくる。
「石」と「鳥」、「フランスパン」と「空」、「暖炉」と「汽車」、「ライオン」と「ゆで卵」・・・・彼が50代の1950年代の作品は、きっちり写実的に美しく描き、その本体の意味や存在の神秘的な側面を見せ、私たちに投げかけてくる。「傘」と「コップ」の関係性を謎解きした結果、これが一番の解決としたのは、「開いた傘」の上に「水が入ったコップ」を乗せる構図だった。
これがマグリットワールドなのだ。

1965年、67歳でニューヨークのMOMAで個展を開き、69歳ブリュッセルの自宅でガンで亡くなるまで、幼馴染だった美しい妻ジョルジェットと最期まで一緒だった。
小さな犬を飼い、アパートで暮らし、外出は路面電車を使った。待ち合わせの時間には遅れることがなかった紳士だったのである。

今回、世界10ヵ国以上から集められた130点もの作品が、時代ごとに展示され、見ごたえのある回顧展だった。

国立新美術館
2015年6月29日まで

Monsieur Rene Magritte (Adrian Maben, 1978)
https://www.youtube.com/watch?v=KNHNWTqiE8I

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