ブログ 95歳のつぶやき 歩行困難
ブログ 95歳のつぶやき 歩行困難
主人の父は95歳。
まだらボケが相当進んできた。
こうなるともはや、まだらではないような気がするが、一応まだらボケだ。
先週、突然歩けなくなり、言っていることが全然意味がわからない。
お金のことやテレビのことを言い始めても途中でフニャフニャになり、結論までたどり着けないで言いよどんでしまう。
それで先週、脳神経外科でCTスキャンを撮った。
本人、この日は元気いっぱい、いつもの毒舌ぶりを発揮。
病院は待たされることが当たり前なのだが、予約の時間を5分過ぎたらいつもの小言が始まった。
父「なんでこんなに待たされるんだ! 全く患者のことを考えてないな!市民のためとか言って、市民から金取っておいて、これはないだろう!?えッ!?部屋が6つもあるのに医者が1人か?なにをやってんだか…」
と自分は耳が遠いから、多少小さめな声で言っているつもりだが、かなり廊下に響く叫びに近い。
こんな時、以前の私は本当に一緒に居るのが嫌で、他人のフリ、聞こえないフリをしたものだ。しかしこのヨシナリのお陰で、今やこんなことにはビクともしない強い精神力を備えた私は、
「そうですね、でももうじきですよ」
などと適当に相槌を打てるようになった。
病院に来る前からこうなることは、最初からわかっている。
すぐ隣のカウンターでは一人の老人が、「俺のお財布に触るなよ!」と親切に拾ってくれた看護師に怒鳴っていた。
病院も今や老人問題で大変なんだな。
予約時間を10分過ぎて診察室に呼ばれた時は、看護師も医師からも
「大変お待たせいたしました…」と深々と頭を下げられた。
医師がCTの1枚に、何かピカッと光る箇所を指差して「ここの頭蓋骨のところ、金属が入ってますね。どうされましたか?過去に何か怪我でも?」
と聞くと
父は「喧嘩、喧嘩して殴られて陥没したの。包丁で切られた時もあった」
いつも通り話をモッているものの、完璧な即答。
医師は片手をデスクに滑らせズッコケた。
そして医師の判断は「脳の縮み方は年齢相応」だった。
「このご年齢ですと、リハビリをしなさいとは言いません。どうかお部屋の中で少しずつ歩いて、脚の筋肉が衰えない程度に頑張ってみてください」
その日は疲れたのか、早めに床についた父は、翌日からトコトコと小股だが歩くようになった。
わかった事は、ヨシナリはテレビを真夜中まで見て寝不足になった時と、朝が非常に冷え込んだ時に歩行困難になるということだった。
大好きなラグビー・ワールドカップを見たいがために寝不足が続いたのだ。日本がベスト8に残れず敗退したのち、スコットランドやアルゼンチンの試合を観戦しながら、父は同じ質問を繰り返す。
父「それで、この勝った方が日本とヤルんだろ?」
主人「お父さん、昨日も言ったでしょ? 日本は敗退したの」
父「……」
また数時間経って
父「日本戦は何日?」
主人「日本はもう帰国したでしょ?記者会見してたでしょ?」
そしてまた翌日
父「日本は今度どことやるの?」
主人「日本は勝ち残れなかったからもう帰ってきたの。総理官邸に行ったでしょ?」
父「……」
一体何度同じことを言えばいいんだろう。
主人が我慢の限度を越して、「だから・・・」と言いかけた途端、
父「だからって言うな!目上の人をもっと敬え!!」と怒鳴り散らす。
まだらボケが速度を増しているのか、日本びいき過ぎるのか、わからない。
医師が言う「年齢相応」とはこういうことなのだ。と、思うようにしよう。