ケン・ブラウン
ケン・ブラウンのカトゥーン
Ken Brown
耐え切れないほど可愛らしい生き物たち
誰でも子供の頃夢中で見た“セサミ・ストリート”。そのアニメーション製作を手がけ、長年子供たちを楽しませてきたケン・ブラウン。
彼は小学生の時からCARTOONIST(風刺漫画家)を目指していた。
手に持っているのはダイナマイトだ
「木曜の夜アナーキスト・クラブ」
2001年9月11日、彼は自宅の窓から数ブロック先で街が崩れ落ちる姿を見ていた。
「今すぐ山の方に移動しようか、それともここに残ろうか・・・」
究極の選択に迫られ、残ることを決意。わけのわからない恐怖、不安、悲しみ、怒り、言葉に表せない気持ちを抱えながら、お互い支え合おうとしていた人々によってコミュニティーが復活。
街の機能が失われ学校に行けなくなった近所の子供たちを集めて、ボランティアでCARTOON(風刺漫画)の授業を始めた。
アートではなく、漫画の授業だ。
あの混乱した状況の中で「笑い」にこだわり、人を笑わせるために漫画を描くこと、彼自身が失いたくなかったことだった。
ケンはマサチューセッツ州生まれ。100年前に先祖がイギリスからアメリカへ渡ってきたそうだ。
彼の漫画好きは子供の頃からだった。小学校の授業中、おかしな事を一日中考えていたという。
「この人が今、こんなセリフ言ったらおかしい・・・」
「こんな事が突然起きたら笑えるのに・・・」
口にすると、クラスメートみんなが笑った。
その時のひらめきが、現在の仕事の土台になっている。
フレアマーケットで見つける「耐え切れないほど可愛いモノ」と、古き良き時代の誰かの写真、それらをコラージュし、おかしな世界を創りあげる。それを彼はデジタル・オペラと呼ぶ。
誰もが微笑み、苦笑いする題材は普通の生活の足もとに起きそうで、起きたら困るような事だ。
50’~60’の古き良きアメリカの明るく笑うママや、プールサイドのカップルが、エイリアンやモンスターと遭遇し、田舎でのキャンプやせっかくの遠足を台無しにされる。
共通して言えるのは日々身の回りで起きる不条理な事だ。私たちが遭遇する時に試練と思える事柄は、別の次元から見たらこんなものなのかもしれない。
また、おめかしした少女が笑いながら持っているのは、凶暴なトカゲだったり、ボウリング場でおそろいのユニフォームを着て、自慢げに男性たちが抱えるマイボウルからは、点火されたダイナマイトの線が突出している。
グレーハウンドバスの窓に1人死神が乗っているのが見える、などなどのシーンが古く懐かしい色合いのポストカードの中で完成されている。
楽しい思い出と悲惨な出来事は、表裏一体なのだと言っているようだ。
一体どんなもめごとが起こっていたのか・・・
©Ken Brown
「バーニーの離婚」
「死へのホリディ」
©Ken Brown
彼の週末の仕事は、のみの市へ出かけてゆくことだ。
アメリカの古き良きキャラクター、「可愛らしいモノ」を見逃さない。捨て去られた古いスナップ写真を見つけ出し、彼のエッセンスを加えるのだ。その数はなんと500以上になる。
大学教授のような落ち着いた風貌で「5セント払って、僕の家のツアーをしませんか?」 と言った。5セント払うのは冗談だったけれど案内してもらってわかった。
ケンは半端ではないコレクターだったのだ。大小さまざまなアメリカのアニメに出てくる、ビンテージキャラクターが、彼の仕事部屋を取り囲むように並んでいた。
毎日彼の仕事を監督しているのは彼が「耐え切れないほどかわいい」と称するモノたちだった。
今日も私のパソコンに新しい作品が配信されてきた。ケン・ブラウンの「あり得ない世界」は健在だ。
大学教授のような落ち着いた風貌のケン・ブラウンだ
©Pcket Corporation
©Packet Corporation
ケンが最初に「5セント払って僕の家のツアーしてみませんか?」と聞いたその理由がわかった。
コレクターが見たら興奮するだろうな。
©Ken Brown
ケンのご先祖はイギリス系。子供の頃いつも遊んだ祖父の家の庭に、割れた食器を埋める穴があった。
それをリサイクルして作った食器棚。 楽しい~!
バイオグラフィー
フィルムメーカー、写真家、デザイナーとして現在活躍中。
主な作品は
MTVのアニメーション、セサミストリート
カトゥーン(漫画)ポストカードの展覧会をニューヨーク、シカゴ、ジュネーブ、東京において開く
2005年
"THE UNBEARABLE CUTENESS OF BEING" (Blurred Books in N.Y.)を出版
週に一度以上のペースで新しいデジタルオペラを制作、発信している。
ケン・ブラウンのHP
http://kenbrownpixpop.blogspot.com
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