椀
椀
大正時代のお椀
漆を習い始めて最初のころだったので、どのように壊れていたかの記録を撮っていませんでしたが、口のところ、底などところどころ漆がはがれていました。
まず全部うるしをヤスリでこすって落とします。
そこに下地となる切粉(きりこ)を、木のハケで付けてゆきます。
(そのハケも手作りです。1枚の薄いひのきの板を、刀で先にいくほど薄くなるように削ります。)この黒いのが切粉です。漆を塗るのはまだまだ。下地をしっかり作ってから。その切粉を水と紙ヤスリで研いで平らかにします。(写真はクリックすると拡大できます)
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朱色の本漆を『中塗り』し(その塗る刷毛も自分で作ります)、固まったらヤスリで研ぎます。これを『中塗り研ぎ』といいます。
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中塗り研ぎの後、再度朱を塗ったら、厚く塗りすぎたために、『縮み』という現象が!
これはこのままにしておくと、膿んでしまいますから、再度ヤスリで研ぎます。
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朱色を塗ること3回目。もうこれ以上手を加えない『塗り立て』という状態です。今度はなんとかなりましたが、内側の表面がでこぼこしています。下地の修理段階でやったことが、ここで全部出てきます。でもこれは最初の経験。このでこぼこも可愛く思えます。お椀が手の平の中で、しっかりした形になっているのを感じます。漆の厚みがお椀に乗ったようです。
黒のお椀
このお椀も口の部分、底の部分がはがれていました。
全面を水と紙ヤスリでマットな状態まではがします。そこに下地の『生漆(きうるし)』を塗り、『切粉』を木のヘラで付け、固まった後平らかに研いだら『二辺地(にへんじ)』を木のヘラで付けます。これは『ニ辺地』を付けたところ。
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二辺地を研いで平らかにしたら、黒い漆の『中塗り』です。これは中塗りをした後の研いだ状態、『中塗り研ぎ』です。
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最後の『上塗り(うわぬり)』まで来たら難問が。小さなゴミが、漆を塗った時に落ちているのです。鳥の羽の付け根の先の部分を、更にカッターで細くして、ゴミを拾うのですが、この時は拾っても拾っても、落ちていました。刷毛の中にあるゴミ、空気中に舞っているゴミ・・・ゴミとの戦いです。もう一度研いた状態。ポツポツとあるのが、ゴミの跡です。
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もう一度『上塗り(うわぬり)』をした後、研いだ『上塗り研ぎ』です。今回はほとんどゴミが取れています。
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これは、最後の仕上げの『呂色研き(ろいろみがき)』をしたところ。
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完成。蓋の柄はもともとあったものです。
糸底のない椀
これは若い頃、思い切ってこの椀と皿を5客ずつ買い求めました。木をくり抜いて作られたお椀です。木目がきれいに横に入っています。糸底がないので、モダンなイメージです。アイスクリームやスープを飲んだりしていましたが、ある日ヒビが入ってしまいました。
まずは『刻苧(こくそ)』です。刻苧(こくそ)とは、傷や割れ目を彫刻刀でV字に彫り、生漆(きうるし)とお粥でできた糊(のり)、ひのきの粉を混ぜたものを練って埋め、もとの木の椀と同じ硬さの土台を作る作業です。
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刻苧(こくそ)がやせてしまい、再度刻苧(こくそ)をつけました。
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もう一度刻苧(こくそ)をしたあと、研いでから砥の粉を。これは底です。
その上に二辺地粉と生漆、研いだらまたその上に砥の粉と生漆をつけます。そして研いでからやっと一回目の下塗りです。
小さなお吸い物椀
これはお嫁に来た時から、あったのは知っていましたが、めったに出されない器の一つでした。小さなお吸い物椀ですので、普段使いにはお上品過ぎるからでしょう。木のものは使っていないと動きますね。やはりこれもヒビが入ってしまっていました。
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その刻苧(こくそ)を研いだところですが、やせて(縮んで)しまっているので、きっと再度刻苧(こくそ)をするのではないかな?と予想しています。ヒビの割れたところにしっかりと下地が入らないと修理になりません。
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刻苧(こくそ)のあとの元の形に合わせた研ぎ。細く丸めたペーパーやすりで横に研ぎました。砥の粉もつけて研ぎます。
まだまだ続きます。お楽しみに。
外が木目、内が朱の椀
普段使いのお椀です。内側にヒビが入ってしまいました。
これもV字に彫り、刻苧(こくそ)をして研ぎます。
椀の底、口、糸底に麻の布着せをして補強します。持った感じがしっかりしてきました。
布着せの上から薄く糊漆をつけ、研いでから二辺地粉と生漆をつけて研ぎ、さらに砥の粉と生漆をつけました。だんだん堅くなってきました。
内側を研いで下塗りし、凸凹を埋めるために砥の粉と生漆を混ぜたものをつけます。このエビ茶色は朱色に変色するはずです。
内側を再度研いで中塗りしました。だんだんつやっぽく、ふっくらしてきました。
木目の椀
小ぶりの木目椀にヒビが入りました。刻苧(こくそ)をして研ぎます。
口の周り、底に布を着せます。
布を着せたところに糊漆をつけ、乾いたらその部分に錆つけし、研いで捨て漆をつけます。